富山は南と北に二つの峰を持つ、美しい双耳峰。南の観音峰と北の金比羅峰の頂上には、それぞれお堂があります。
南峰頂上にある観音堂は、聖武天皇の勅願により行基菩薩が天平3年(731)の正月に作事を始め、6月に工事を終えたとされています。自然環境の厳しい山頂は風雨や雷が激しく、焼失や倒壊、再建を繰り返してきた歴史が。現存の観音堂は昭和30年に失火で全焼後、再建したもの。現在は往時の石像物が夢の跡のように点在しています。
麓には福満寺の本堂があります。当初は、現在の本堂から登る表参道の一合目と二合目の間の諏訪の台、地籍でいう大房というところにありました。その後焼失し、元治元年(1864)に現在地に本堂を再建。山門の仁王像はかつて山頂にあったもので、平成10年に移されました。
いまではほとんどの巡礼者が麓の本堂で納経を済ませ、次の札所に向かうとのことです。
富山は標高349.5メートル。「南総里見八犬伝」と舞台として有名な山でもあります。参道入口には大正元年の登山道標があって、「ふもとに伏姫籠穴あり」と八犬伝の案内があります。
近年皇太子ご夫妻の登頂でも知られ、登山客に人気のある富山。福満寺の仁王門から一時間ほど、山頂まで足を延ばしてみるのもよいでしょう。ルートはわかりやすく、山道もよく整備されています。
「仁王門」の名札を過ぎて登りつめると、そこには山の頂とは思えない広場があり、観音堂が。南峰から15分ほど尾根道を歩くと、北峰の頂上に。展望台もあり、視界が大きく開けます。
ご詠歌の「四方浄土を見るも極楽」通り、眺望を楽しめるでしょう。