県道88号線を通り、下滝田の汐の下橋まで行き、平九里川と反対の方向に曲がると「西の谷」。この奥に山を背負うようにして建っているのが長谷寺です。
「西の谷(にしのやつ)」はお寺のご詠歌に詠み込まれた場所。山に囲まれた傾斜地にのどかな棚田が広がる農村地帯です。
初春の候には椿の赤い花、境内には梅の白い花が咲いて、お寺の周辺を明るく彩ります。
行基菩薩の開基と伝えられている長谷寺。当初は近くにある観音山という山頂にありましたが、弘化3年(1846)頃に現在地へ移転されました。
お堂は三間四方で、型式から室町時代の建築物ではないかといわれるものの、建築年代は不詳とのこと。
現在のお堂は昭和63年に改築されたもので、本尊・十一面観世音菩薩像があり、享保15年(1730)の御詠歌額も残されています。
こぢんまりした境内には石碑、石仏が並び、文政5年(1822)建立の光明真言塔や、寛政3年(1791)の「十三番札所道」と表示した石造の道しるべなどがあります。
長谷寺の近くには、下滝田と上滝田の両区域にまたがるようにして滝田城址があります。初めは一色氏が居城としていた滝田城。のちに里見義堯が稲村城を出てからしばらくいたともいわれています。「南総里見八犬伝」の冒頭の舞台となった場所としても有名な滝田城へは、ふたつのルートの登り口があります。
下滝田ルートの尾根道には展望台があり、西の谷に静かにたたずむ長谷寺の姿を臨むことができます。